2010年04月20日
小樽市ボランティア・市民活動センター情報 No.2
ボランティア・市民活動の運営力向上のカギを探る
(全国ボランティア活動推進センター発行 ボランティア情報 No.389
第18回全国ボランティアフェスティバルえひめ・分科会「創(はじめ)にプランありき」より要約)
○コーディネーター:えひめNPOセンター 代表理事 菊地 修さん
○スピーカー:市民と暮らし研究所 所長 太田 昌也さん
IIHOE〔人と組織と地球のための国際研究所〕
ふくおかNPOセンター 代表 古賀 桃子さん
☆真のボランティアニーズをどうとらえるか?☆
「善意」の活動を周囲がどのように評価し、社会にとってどうすることがよいのかを、ボランティアをする側が十分に検証する必要がある。「思い込み」にならないように、状況を正確に把握し、ニーズ(必要とされていること)と、ウォンツ(自分たちがやりたいこと)とを、正確に分けて考えなければいけない。
ニーズをどうやって掘り起こし、キャッチしていけばよいのか迷っている人たちは多い。アンテナを立て地域を歩き感じたことや気づきが、地域に生きている人たちの話しをつぶさに聞いて、「今起きていること」と、「次に起きそうなこと」を引き出していくと、真のニーズが形になって現れてくる。
☆ボランティア・市民活動にとっての「成果」とは?☆
今の日本のボランティアの世界では、「動機」重視であり「成果」はあまり検証されず、「動機」と「成果」のバランスが崩れかけている。「成果」とは、どのように状況を変えることができたか、どういうノウハウが培われたかである。
☆事業計画におけるビジョンや意志統一の重要性☆
団体の運営を継続していくためにパッション(情熱)からミッション(使命)につないでいく作業は、すごく大事である。
一つ一つの事業について、組織全体としての指針をどう定めるのかという議論を、全員が納得するまで徹底的にする。
往々にして、やりたいことと、やらなければいけないことの量に、ものすごいギャップが出る。どこかをそぎ落とさないことには、組織を運営できないという状況のなかで、優先順位をつけていくことになると思うが、今やっていることの見直しがかなり重要だと思う。そのときには、当然、スタッフ同士で紛糾することもあるが、それを恐れずに、全員で議論を尽くしていくことが大事である。
体力もモチベーションも維持しながらやっている団体は、ビジョンがすごくはっきりしていて、自分たちが生きている間に達成できないようなビジョンであっても、元気がよく、いろいろなところとの連携も貪欲にやっているところは多い。
設立当初からのメンバーというのは、想いが共有できているが、それが10年経って、メンバーが入れ替わったりするなかで、団体のミッションやビジョンについては、後から来た人も分かってくれていると思いがちであるが、実はそうではない場合が多い。そのために、ミッションやビジョンは常に掲げて、想いを共有するための作業を、少なくとも年に1回は行い、全員で確認することが重要である。
☆提案やプレゼンテーションに求められること☆
計画とは、自分のためではなくいっしょに実行してくれる人のため、人を巻き込むためにつくる。ゆえに、計画は分かりやすいものでないといけない。
プレゼンは、「私がやりたいことを助けて!」ではなく、相手が「自分の意思で計画に加わったのだ」という気持ち、良い判断をしてもらうために、ニーズ等の根拠やデータを揃え、分かりやすく示す工夫をすることが重要である。また、「伝えること」と「伝わること」の違いということも、市民活動の分野では大切である。プレゼンとスピーチの違いは、スピーチは相手の心を動かせばいい。しかしプレゼンは、相手が自分の判断で動き、周囲も動かしてもらわないといけない。「今日はいい話しだった」で終わっても、それはいいスピーチかもしれないが、いいプレゼンではない。相手の身体や、お金を動かさなければいけない。良いプレゼンは「一人歩き」してくれる。
自分たちの身の丈をしっかり見極めて、「こうしたニーズのために、自分たちにできることはこれで、この助成金が必要です」というスタンスが大事である。
☆創業時の「想いの遺伝子」をいかに次世代へ伝えるか☆
創業時の「想いの遺伝子」を次世代を担う人たちに対してどのように継承していくかも、団体運営においては重要である。
「若い人が集まらない」とう声が多いが、活動を担ってくれる人たちの状況を理解することも大切である。特に、若い人たちにとっては、現在の活動内容がどうかとか、どんな取り組りくみをしてきたとか、メンバー構成などよりも、その団体が自分たちの時間やスキルを効果的に生かしてくれるかどうかに関心が高いようである。「平日の午後に活動をしています」と言われても、学生やサラリーマンは、その時間は学校へ行っているか、仕事をしているので、巻き込むことは厳しい。シャッターを閉めて、客が来ないと言っているのと同じである。
昔は、事業を始めるときには「ハート」と「ガッツ」と「スキル」が必要と言われていたが、最近の大学生は、「ハート」はあるけど、「ガッツ」と「スキル」がない。「ガッツ」を教えるのは、実習的にボランティアの受け手となる当事者に触れる機会を設けると、「ガッツ」は育つと思う。
ボランティア活動を生み出してきた世代と、物心がついたときには、すでにボランティア活動が存在する時代に育った若い世代との時代背景の違いがあり、そのギャップをもう一度埋め直す時期にきているのかもしれない。