小樽市ボランティア・市民活動センター

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ボランティア・市民活動センター情報No.2

ボランティア・市民活動の集団の特性をふまえた運営とは
〔全国ボランティア活動推進センター発行 ボランティア情報 No.389
      第18回全国ボランティアフェスティバルえひめ(2009.9.26〜27)
                分科会「人ノ間工房(ひとのまこうぼう)」より抜粋〕

 ボランティア・市民活動団体が成果をあげ、継続していくためには、メンバーの心理を理解し、人間関係に配慮して運営していくことが重要である。ボランティア・市民活動団体の集団としての特性や、集団が機能を発揮するための工夫や配慮などについて話し合われた分科会「人ノ間工房(ひとのまこうぼう)」でのファシリテーター 市民と暮らし研究所 所長 太田 昌也さんによる説明の内容を紹介します。

✿出入り自由の集団であるボランティアグループ✿
 人は、生まれたときから常に何らかの集団に所属し、さまざまなことを学んだり、気づきながら、人生を送っていきます。 この集団には、3つの種類があります。
 一つは選択できない集団、それは「家族」です。二つ目は、所属することは、ある程度選択できるけれども、一旦所属すると、一定の強制力が働く集団、例えば「学校」や「会社」がその代表です。三つ目が出入り自由の集団、気に入らなければいつでもやめることのできる集団です。これは、主に趣味のグループやスポーツクラブですが、ボランティアグループも、この集団に属します。
 ボランティアグループというのは、気に入らなければいつでもやめることができる人たちの集団ということを、組織運営の大前提と考えておかないといけません。

✿人が集団に求める「4つの社会的欲求」✿
 気ままに出入り自由な集団に所属したときに、人は何を求めるのでしょうか。 お金では替えられない喜びや学び、共感、あるいは、社会の改善などがあげられますが、大きく4つの社会的欲求があると言われています。
 一つは、自分が果たすべき仕事や役割があることです。そのため、意識的に役割を分担するような活動の設計をしていくことが大事です。二つ目は、自分が担った役割や仕事を果たしたことを、周囲の人から認められることです。三つ目は、一人ではできないような大きな仕事を、仲間と力を合わせて成し遂げることによって、達成感や成就感を味わうことです。
 そして、四つ目には、その集団のなかで、自分が他には替えられない存在として、認められることです。「自分は、この集団のなかでは欠かすことのできない存在として認められている」という実感が、自分自身を集団につなぎとめることになります。
 この4つの社会的欲求を、集団のなかで互いに満たし合うことが、良い人間関係をつくっていくことにつながると思います。

✿合意形成を原則とした意思決定✿
「十人十色」という言葉がある通り、組織のなかでは、人はみな違うということを認め合うことも重要です。考え方や価値観が違うのは当たり前であり、独断で物事を決めるとか、決定を押しつけるのは反発や離反を招いてしまいます。
 ボランティアグループが事業を推進していくなかで、物事の決め方というのは、とても大事であり、私がすすめているのは、合意形成(コンセンサス法)です。多くの人が、物事を決めるときには多数決が民主的な方法だと考えていますが、多数決には決定的な欠点があるのです。というのは、多数決で物事を決めると、少数の人の意見が反映されないため、確執の原因になってしまいます。
 そのため、コンセンサス法を用いて、すべてのメンバーの合意のうえで物事を決めることが望ましいと思います。全員が納得するまで、徹底的に議論を尽くすのです。もちろん、いろいろな意見が出て、決まらないときもあります。その場合は、例えば、ある人たちに結論を委ねるとルールを決めておくとよいでしょう。

✿目的の達成をめざす「課題達成機能」✿
ボランティアグループのような集団には2つの機能があります。一つは、与えられた課題を達成しようという「課題達成機能」であり、もう一つは、みんなで仲良く、良い雰囲気のなかでやりたいという「集団維持機能」です。活動にかかわっている人たちは、課題達成的な思考が強い人と、反対に集団維持機能の方が強い人と、どちらかのタイプに大別できると思います。
 目的に達するというのは、山登りのようなものだと思うのですが、ボランティアグループで何かをしようとするときには、現状と、めざす社会との間に差があります。その差は何かというと、今は不足しているものであったり、邪魔をしているものです。それがあるために、目的までは一気に上ることができないので、「今年はここまで登りましょう」という目標を定めます。
 最終的な目的を達成するためには、道しるべとなる目標(ステップ)の設計が大事だと思いますし、そのステップに上がっていくために、メンバーの特性や能力、興味、関心にフィットした形で、一人ひとりが役割を分担していくことが重要だと思います。
 そして、プログラムが終わったら、必ず振り返りをしてどこまで達成できたか、また、次のステップを示しながら、一歩一歩、目的に向かって近づいていっているのだということを実感できるような計画が必要です。
 一つ一つのプログラムというのは、目的に到達するための手段です。例えば、講習を受けた人が、その結果を活かして活動することで、はじめてその講習の意味が出てくるのです。そこがどれだけあるかということが成果です。
 ですから、目標は、目的に到達するための手段にしか過ぎないということを、事業を計画するうえで、しっかりと認識すべきです。

✿居心地の良さによって集団を維持する「集団維持機能」✿
自分たちが所属している集団を、居心地の良いものにしていくというのが集団維持機能です。
 分かりやすい例として、会議や話し合いの場を想定すると、孤立している人、傍観している人、無口の人に対しては、上手に背中を押してあげて発言を促すとか、意見を求めることが必要になります。また、固執や自己主張、押し付けの強いタイプの人には、例えば「ほかの人の意見も聞いてみましょうよ」といって、一致点を探ることも重要です。
 もう一つ大切なことは、人の発言や行動を受け止めることです。特に、発言が弱かったり、参加度が低い人たちが発言をしているときに、相槌を打つとか、うなずくという態度によって、発言者は励まされるのです。表情や態度、しぐさによって、人の発言や行動を支持することが可能になります。
 さらに、議論が硬直してしまったときは、お茶を入れたり、窓を開ける、休憩を提案する、または、ユーモアのある発言をして、その場の雰囲気を和らげることも必要でしょう。

 集団には自然発生的にこの2つの機能が働きますが、どちらが強いか弱いかというよりは、それぞれの機能が得意な人がそれぞれの部分を補い合い、良い雰囲気でありながらも、求められた課題にきちんと応えていくような集団運営を行うことが求められているのです。
 そのためには、リーダーも万能ではないので、自分のできない部分を、ほかの人に補ってもらうという発想が大事だと思いますし、補い合うことによって、集団の結束力が生まれていくと思います。

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